「花粉症」とは、スギやヒノキ、ブタクサなど植物の花粉が飛散している時だけに起こる“季節性アレルギー疾患”の一つです。
花粉が目や鼻の粘膜に接触することで、くしゃみ・鼻水・鼻づまりや目のかゆみ・充血・涙目などの症状が引き起こされます。(※アレルギー症状の出方には、個人差があります。)
花粉症治療の基本は、「薬物療法」や「レーザー治療」など出ている症状を軽くするための治療(対症療法)ですが、近年スギ花粉症の場合には、花粉症そのものを治癒するための治療(根治治療)として、「アレルゲン免疫療法」が行われるようになりました。
花粉症治療は、重症化すると炎症を抑えるのが難しくなる傾向があります。
毎年決まった時期に鼻や目の症状・全身症状でつらい思いをされている方は、お早めに当院までご相談ください。
花粉症の症状について
花粉症の症状は、鼻や目(粘膜)などの原因となるアレルゲン(花粉)が入り込みやすい場所に現れます。
① 鼻の症状(アレルギー性鼻炎)
・くしゃみ
くしゃみが続けて何度も出る。
・さらさらとした水っぽい鼻水
透明でサラサラした水っぽい鼻水が出て、何度かんでも出てくる。
・鼻づまり
鼻粘膜の腫れや血流が悪くなることによって、詰まる。
② 目の症状(アレルギー性結膜炎)
・目のかゆみ・充血・涙目
③ その他の症状
・喉や首・顔がかゆい(肌荒れ)
皮膚に花粉が付くことで、かゆみを感じる。
・微熱や頭痛(頭が重たく感じる)、体がだるい(倦怠感)
アレルギー症状が重い場合、全身症状を伴うこともある。
・イライラする・集中力が低下する・眠れない
不快症状によって、生活の質(QOL)にも影響が及ぶことがある。
花粉症は全身に症状が現れる可能性があり、出る場所や症状の強さには個人差があります。
花粉症の原因と発症のしくみ
花粉症の原因は、スギやヒノキなど植物の花粉が体内に侵入することです。
体が花粉を排除・取り除こうとする防御反応(=アレルギー反応)として、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどを起こします。
花粉症の原因となる植物
スギ花粉が有名ですが、花粉症の原因となる花粉は、日本では約60種類もあります。
神奈川県健康医務局によると、神奈川県近郊では春になるとスギ・ヒノキが多く飛散し、初夏(5月~7月)になると、イネ科の雑草カモガヤ(道端に生育)・オオアワガエリ(公園や河川敷・空き地に生育)など、秋になるとススキ・ブタクサ(秋の花粉症の代表格)・ヨモギなど草木からの花粉が飛散しています。
(図)神奈川県近郊の花粉飛散カレンダー
花粉症の症状が現れるしくみ
ヒトには「免疫」と呼ばれる、体内へ侵入するウイルスや細菌など異物を排除する働きがあります。
免疫システムによって、花粉が体内に入ってくるたびに、異物(花粉)に対抗するための抗体(IgE抗体)が作られ、少しずつ体内に蓄積されていきます。
この蓄積量が一定レベルを超えると、次に花粉が入ってきた時に体から花粉を排除しようとする「免疫反応(アレルギー反応)」が現れ、くしゃみや鼻水、目のかゆみ・涙目などが起こるようになります。
なお、この免疫反応が現れるタイミング(≒花粉症の発症)には、個人差があります。
花粉症の検査について
花粉症は、花粉の飛散時期や問診と自覚症状・他覚所見から判断していきますが、最終的な診断には、鼻汁好酸球検査や血液検査が必要となります。
① 問診と視診
発症した時期、目の症状の有無など症状のこと、他のアレルギー性疾患の有無、ご家族のアレルギー歴などについてお伺いします。
また、鼻粘膜の色や鼻水の性質・状態、目の状態を観察します。
② 鼻汁好酸球検査
綿棒で鼻水を採取し、顕微鏡で好酸球(アレルギー反応による炎症があると出る)があるかどうかを調べます。
③ 血液検査
何がアレルギーの原因物質となっているか、花粉に反応するIgE(特異IgE)を血液から調べます。
血液検査は、希望者のみに行われることが多い検査ですが、検査することでアレルゲンに対する反応の強さや舌下免疫療法の適応があるか分かりますので、知っておくと良いでしょう。
ほかにもアレルゲンを調べる検査には、皮膚へのパッチテストや鼻粘膜へのパッチテストがあります。
花粉症の治療について
薬物療法
花粉症治療の基本は、症状を抑える「薬物療法」です。
・抗ヒスタミン薬
くしゃみ・鼻水・鼻づまり、目のかゆみなどの治療に使われています。
現在よく使われている“第2世代抗ヒスタミン薬”は、眠くなる副作用を抑えた処方となっています。
・「抗ロイコトリエン薬」や「鼻噴霧用ステロイド薬」
鼻づまりが強いときに使用します。
鼻噴射用ステロイド薬は鼻だけに作用するので、ステロイド内服薬よりも副作用が抑えられており、安心してご使用いただけます。
・「点眼薬」
目に症状が現れている場合には、点眼用抗ヒスタミン薬、点眼用遊離抑制薬、点眼用ステロイド薬など、症状に合わせて処方します。
また、鼻水・鼻づまりをなくすために、薬の吸入治療(ネブライザー)も適宜行い、治療をしていきます。
レーザー治療
薬物療法であまり効果が得られないほど鼻症状(特に鼻づまり)が強い方やできるだけ薬を飲みたくない方には、レーザーで鼻の粘膜を焼いて、アレルギー反応を抑える「レーザー治療」を行うことがあります。
保険適用で治療可能で、片鼻10分程度で処置できます。
ただし、花粉が飛んでいる時期に行うと効果が不十分となってしまうため、スギ花粉症がある方の場合、2~4月のレーザー治療は避けた方が良いでしょう。
アレルゲン免疫療法
アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少しずつ体に取り込んで、時間をかけてアレルゲン(花粉症の場合:スギ花粉)に体を慣らす方法です。
花粉症の唯一の根治療法で、現在は“スギ花粉”のみに適応されます。
レーザー治療同様、花粉症シーズンには治療を始めることができません。
花粉症オフシーズンである6月~12月の間に摂取を開始する必要があり、3~5年くらい続けると、症状を軽くしたり、日常生活に与える影響を改善したりする効果が期待できます。
アレルゲンの取り込み方法には、注射による「皮下摂取」と舌の下に薬を入れて飲み込む「舌下(ぜっか)摂取」の2通りがあります。
よくあるご質問
1) 花粉症になりやすい人はどんな人ですか?
アレルギー体質の人は、花粉症になりやすい傾向があります。
昔に比べ、ストレス社会や大気汚染、食生活の変化なども関係し、近年アレルギー体質の人が増えています。
また、これまで喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患になったことがある人やアレルギー疾患を持った家族がいる人などは、特にアレルギー体質になりやすく、遺伝的要素が強く関係していると報告されています。
2) 花粉症は自然に治りますか?
花粉症は食物アレルギーなどとは異なり、成長と共に自然治癒することはありません。
最近は2~3歳くらいで、花粉症を発症するお子さんも少なくありません。
小さなお子さんの場合、大人よりも症状がはっきりと出ないで、鼻づまりだけ、目や鼻をかゆがるだけなど曖昧な場合もよくあります。
花粉症とは気づかず、治療せずそのままにしていることで、難聴を引き起こす可能性のある滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)や副鼻腔炎などの引き金になったり、治りが悪くなったりするケースもありますので、お気軽にご来院ください。
3) 自分でできる花粉症対策には、どのようなことがありますか?
花粉症対策のセルフケアで大切なのは、「花粉との接触をできるだけ避けること」です。
- 花粉飛散情報をよく確認して行動する
特に、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日は花粉の飛散が多くなりますので、要注意です。 - マスクや花粉症用メガネを使用する
最近は、花粉除けガードが目立ちにくいメガネも発売されています。 - 外出から戻ったら、玄関先で花粉を落としてから家に入り、洗顔やうがいをする
- 室内の換気は花粉飛散が少ない時間帯(早朝など)に行い、窓付近をよく掃除をする
- 外出時の服装は、できるだけツルツルとした素材(綿・ポリエステルなど)の上着にする