ぶつけた記憶はないのに、鼻血が出ることはありませんか?
お子さんがよく鼻血を出すので、「悪い病気?」と心配されていませんか?
鼻血は医学的に「鼻出血(びしゅっけつ)」と呼ばれ、ほとんどの鼻血は、鼻の入り口に程近い、中央にある仕切りの部分からの出血なので、基本的に心配ありません。
この部分は毛細血管が多く通っている上、粘膜が特に薄いため、鼻をぶつける以外にもいじる(ほじる)ことでも出血します。
鼻の小鼻を10分程度圧迫していれば、簡単にご自宅でも止まります。
しかし、よく鼻血を出すお子さんは、鼻をいじってしまう背景にアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があるので、それらの病気を治療することが大切です。
また、10分以上圧迫をしていても止血できなかったり、大人でよく鼻血を繰り返したりする場合には、特別な止血処置や原因を詳しく検査する必要がありますので、耳鼻咽喉科へご来院下さい。
鼻血でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
子どもの鼻血(鼻出血)
子供は大人に比べ、鼻の粘膜が弱いので、少しのぼせたり、興奮したり、血行が良くなったりすることで鼻血が出ます。
特にお子さんがよく鼻血を出していたら、「もしかして悪い病気にかかっているのかも?」心配になる親御さんも多くいらっしゃいます。
子どもの鼻血の多くは、「鼻いじり(ほじり)」による鼻の入り口から1cm程度奥(キーゼルバッハ部位)からの出血です。
前の方にポタポタ出てくる鼻血となり、心配ありません。
止血の応急処置をすれば、10分程度で簡単に止まるため、基本的には治療は不要です
しかし、「よく鼻血を出す」お子さんは、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、風邪による急性鼻炎などを患っていることが多いです。
それらが原因で鼻の炎症が起こり、かゆみを感じているため、頻繁に鼻をいじってしまいます。
さらに、鼻血が止まった後に「かさぶた」ができると、鼻の中がムズムズとして気になり、また鼻をいじって鼻血が出るという悪循環につながります。
鼻の病気の治療を行って、鼻血が出やすい状況を改善してあげると良いでしょう。
お子さんの鼻血でご心配なことがありましたら、お気軽にご相談ください。
大人の鼻血(鼻出血)
大人になると、あまり鼻血を出すことはないと思われるかもしれません。
しかし、大人でも60歳以上の方や空気の乾燥する時期(11月頃~3月頃)と花粉症の季節には、鼻血が出やすくなる傾向があります。
実は鼻血で注意したいのは、子どもよりも大人です。
大人で鼻血が出た場合には、鼻粘膜が傷つくことで出血する以外にも全身疾患や腫瘍などが原因となっていることがあります。
特に高血圧・糖尿病・動脈硬化などの持病のある方は、鼻の奥にある太い血管(動脈)から大量出血することがあります。
頻繁に鼻血が出る方・なかなか止まらない方は、一度耳鼻咽喉科を受診ください。
鼻血の正しい止血方法
ほとんどの鼻血は、命にかかわることはありません。
落ち着いて対処すれば、簡単に止まります。
① うつむき加減で、椅子に座る
② 鼻の小鼻(左右の膨らみ部分)を親指と人差し指で、10分ほどしっかりつまむ
<止血のポイント>
- 周りの人が、「落ち着く」ことが大事です。
- 寝かす、上を向く、首の後ろをトントンたたくことは、止血の逆効果です。
座るのがつらいときには、枕などで頭を高くして、出ている方を下に横向きに寝かせます。 - 鼻血が口に垂れてきたら、飲み込まず、吐き出させます。
血液自体は飲み込んでも害はありませんが、胃に入ると刺激となって、気持ち悪くなります。 - 途中で圧迫の手を緩めず、しっかり10分間はつまんでいてください。
すぐに病院を受診したい危険な鼻血
次のような様子が見られたら、危険な鼻血と疑われますので、すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。
- 応急処置を20分以上行っても、鼻血が止まらない
- 鼻の奥から喉に鼻血が大量に垂れこむ
- 身体のどこかにあざができている
- 歯ぐきなど鼻以外からも出血が見られる
特に抗血栓薬(ワーファリン・イグザレルトなど)や抗血小板薬(アスピリンなど)を服用されている方が鼻の奥の動脈から出血した場合、服用されていない方に比べ、出血のスピードが速く、危険な貧血に陥りやすいです。
上記のような兆候が見られたら、「たかが鼻血」と思わず、速やかに病院を受診しましょう。
鼻血が出る原因
鼻の中は柔らかく弱い粘膜であり、鼻粘膜の下には様々な血管が通っています。
鼻血が出る主な原因は、鼻粘膜が傷つくことですが、全身の病気や腫瘍が原因となることもあります。
鼻粘膜下の血管が破れる
鼻の入口から1~2cmくらい奥で鼻中隔(びちゅうかく)*1側面に「キーゼルバッハ部位」という鼻粘膜の中でも一番薄く、出血しやすい場所があります。
*1鼻中隔:軟骨などから構成され、鼻の中を左右に分ける仕切り壁の役割。
キーゼルバッハ部位には毛細血管が集中しているため、鼻をぶつける、鼻をいじる、鼻を強くかむといったことで、簡単に出血します。
また、鼻の奥の方の太い動脈(蝶口蓋動脈)が破れると、大量に出血することもあります。
(図)鼻腔の血管分布イメージ
特定の疾患がある
次のような疾患がある場合には、鼻血が出やすくなることや頻繁に出血することがあります。
- 血友病・白血病・特発性血小板減少病などの血液疾患
あざができやすくなったり、頻繁に鼻血が出たりします。 - 高血圧・糖尿病など生活習慣病による動脈硬化
血管がもろくなり、鼻血が出やすくなります。鼻の奥の動脈が破れると、大量出血することもあり、すぐに病院を受診する必要があります。 - オスラー病
遺伝的に血管がもろくなる病気で、出血しやすくなります。 - 鼻腔・副鼻腔にできる腫瘍
腫瘍から出血することもあります。 - 鼻の炎症
アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)・風邪による急性鼻炎があるときにも、鼻粘膜が充血し、鼻血が出やすくなります。
耳鼻咽喉科での鼻血治療・検査
鼻血でご来院された場合、耳鼻咽喉科では「止血処置」を優先します。
原因の調査などは、その後必要に応じて行います。
① 止血処置
まず出血部位を内視鏡カメラ等を用いて確認します。
血管収縮薬を染み込ませた、ワセリンを塗ったガーゼ・脱脂綿をキーゼルバッハ部位に詰めて、前かがみの姿勢で圧迫し続けます。
なかなか止まらない場合には、電気メスで粘膜を焼いて止血します。
動脈からの大量出血時には、全身麻酔下で動脈を止める(クリッピング)手術となることもあります。
※必要に応じて、対応病院をご紹介します。
② 検査
キーゼルバッハ部位からの出血であれば、特に検査は不要です。
ただし、次のような場合には、鼻血症状を伴う全身の病気を疑い、血液検査など行います。
- 鼻以外に出血しやすかったり、血が止まらなかったりする部位がある
- 短期間に何度も鼻血を繰り返す(特に大人)
- 10分以上、止血の応急処置をしても鼻血が止まらない
よくあるご質問
1)鼻血が出たら、どうすればいいですか?
血を見ると、子どもだけでなく、大人でもびっくりして動揺する方も多いでしょう。
しかし、鼻の入り口付近から出た鼻血の場合、実際は思ったほど出血していなく、鼻血で命にかかわることは、ほとんどありません。
むしろ、驚き興奮することで、血圧が上がって、血が出やすくなります。
鼻血に対する正しい対処法を身につけ、落ち着いて対応しましょう。
① まずは、落ち着く
「大丈夫、大丈夫」と声をかける、自分に言い聞かせるだけでも、血圧の上昇を抑え、血の勢いを弱めてくれます。
② うつむき加減の姿勢で椅子に座って、鼻の小鼻を上からギュッとしっかりつまむ
血は集まると固まる習性があります。下を向いて1か所に集めることを意識すると良いでしょう。片側からの出血でも、両方つまんだ方が止血しやすいです。
③ 口の中に血が落ちてきたら、飲み込まず、洗面器などに吐き出す
10分程度安静にして、しっかり小鼻を圧迫していれば、鼻血は簡単に止まります。
なかなか止まらない・のどに血が大量に垂れこんでくる場合には、早めにご来院ください。
2)チョコレートやピーナッツの食べ過ぎ・性的興奮で鼻血が出るのは本当ですか?
この話は昔から囁かれていますが、「迷信」です。
チョコレートやピーナッツの食べ過ぎと鼻血の医学的な因果関係は、証明されていません。
チョコレートが高級品だった時代に、親が子供に沢山食べさせないようにするためという説、脂肪分や糖分が高いので、食べ過ぎると余ったエネルギーが鼻血として出てくる説など、発端には諸説あります。
「性的興奮で鼻血が出る」という話も同様で、医学的な因果関係は証明されていません。
ただし、血圧の上昇具合、抗血栓薬などの服用、血管のもろさなどが合致したときには、鼻血が出ることも起こり得ます。
とはいえ、性的興奮だけで、マンガであるような噴き出す鼻血はありえません。